食虫植物と言えば、クネクネと動きながら、虫をパックリと食べてしまう、不気味で得体の知れないイメージを持っている方も多い事でしょう。
しかし、視点を変えると、通常は虫に食べられる側の植物が、逆に捕食者となるのですから、「食物連鎖の下剋上」を実現している魅力的で愉快な生物とも言えます。
通常の光合成と、虫を食べての養分補給も可能なのですから、最強の植物群、植物の進化系と言っても過言ではありません。
そこで今回は、捕虫能力や消化力、捕虫量、見た目のインパクトなどを総合的に考慮し、世界最強の食虫植物ランキングを決定したいと思います。
では早速見ていくことにしましょう。
最強食虫植物ランキング 10位 ミミカキグサ
ミミカキグサは、その名の通り耳かきに似た姿をした、世界中に分布する食虫植物です。
根に付いた、コブのように見える、捕虫嚢という捕虫器官に虫が入ると、フタを閉じて捕まえる「吸い込み式」の捕食スタイルを採用しています。
捕虫嚢はとても小さく、プランクトンやセンチュウなど小さな虫しか捕食することができません。
食虫植物としては、捕虫能力、捕虫量ともに低く、捕虫方法も地味で、物足りないスペックとなっています。
一方で、葉は小さく綺麗で可愛らしい花を咲かせるため、観賞用として女性人気は高く、園芸店で販売されていることもあるようです。
最強食虫植物ランキング 9位 ダーリングトニア
ダーリングトニアは、アメリカのカリフォルニア州とオレゴン州の山地で、蛇紋岩質の土壌の表面に冷水が流れている、限られた場所のみに自生しています。
食虫植物マニアの間で「キモカワイイ」と表現される特徴的な見た目は、コブラのように見えることから「コブラ・プランツ」と呼ばれる事もあります。
筒状の捕虫葉に獲物を誘い込み、消化吸収する「落とし穴式」の捕食スタイルを採用しています。
捕らわれた獲物は、ツルツルとした、内面に足を取られ、底部まで滑り落ち、再び外へ脱出することは困難な構造となっています。
ダーリングトニアは、自ら消化酵素を分泌することが出来ず、バクテリアによって分解されるのを、気長に待って、養分を吸収する仕様となっています。
最強食虫植物ランキング 8位 フクロユキノシタ
フクロユキノシタは、オーストラリア西南部の、海岸線に沿った崖の上の湿地にのみ自生しています。
捕虫葉は袋状で、袋の入り口付近の内壁に蜜腺があり、そこから蜜を出し、虫を袋の中に誘い入れる「落とし穴式」の捕食スタイルを採用しています。
落ちたら最後、内壁には内側に向かった鋭いとげがあり、這い上がることが出来ない仕組みとなっています。
その後獲物は、僅かに分泌される消化酵素と、バクテリアの働きを借りてゆっくりと消化されていきます。
消化酵素の分泌量が少なく消化に時間がかかるため、見た目の割には、捕虫量はかなり控えめと言って良いでしょう。
最強食虫植物ランキング 7位 ヘリアンフォラ
ヘリアンフォラは、南米のギアナ高地固有の食虫植物で、断崖絶壁に囲まれた、涼しくて雨や霧の多い場所に自生しています。
自生地は未開で人の手がなかなか及ばない場所も多く、今後も新種発見が期待される種類と言われています。
漏斗のように上が開いた筒状の捕虫葉を持ち、捕虫葉の先端にある蜜腺から分泌される蜜によって、獲物をおびき寄せ、底に落とす「落とし穴式」の捕食スタイルを採用しています。
内側には逆立った毛が生えており、一度落とした虫を、逃がさない仕組みとなっています。
蓋を持っていないので雨水がどんどん流れ込んでしまいますが、葉のスリットの部分から過剰な水を排出する仕組みも持っています。
2メートルもの大きさに育つ種もあるのですが、自ら消化酵素を分泌することが出来ず、バクテリアによる分解待ちとなり、見た目の割りに捕虫量は少な目です。
最強食虫植物ランキング 6位 ムシトリスミレ
ムシトリスミレは、世界中に分布し、日本でも北は北海道、南は四国まで、高山地帯に分布している、食虫植物の中ではポピュラーな種類です。
スミレのような綺麗な花を咲かせることからこの名が付けられました。
葉の表面から消化酵素を含む粘液を分泌し、その粘着力で獲物を捕らえる「粘着式」の捕食スタイルを採用しています。
虫を捕らえると、分泌された消化液が流出しないように、葉で包み込むような動きをします。
茎の部分でも粘液を分泌しており、ここでも捕虫することが可能です。
結構な捕虫能力を持っており、たくさんの虫を捕まえて、黒ゴマのような斑点だらけの、あまり美しくない姿になってしまう事もあります。
最強食虫植物ランキング 5位 モウセンゴケ
モウセンゴケは、北半球の高山、寒冷地に広く分布している食虫植物です。
日本でも北海道から九州の湿地帯と広く自生が確認されていますが、多数の都道府県で絶滅危惧植物としてレッドリスト入りしています。
葉の表面に腺毛と呼ばれる毛がびっしりと生えており、腺毛の先から、甘い香りを発する、ネバネバとした粘性の高い消化液を分泌し、絡めとる「粘着式」の捕食スタイルを採用しています。
さらには、捕らえた虫は葉や腺毛で内側に巻き込み、消化するまで逃がすことはありません。
大量の消化液を分泌し、宝石のようにキラキラと輝く捕虫葉は、美しくもグロテスクで、食虫植物らしさを感じさせる容姿をしています。
捕虫能力、捕虫量ともに、ベスト5入りにふさわしい強力なものを持っています。
最強食虫植物ランキング 4位 ハエトリソウ
ハエトリソウは、北アメリカを原産とする、いかにも食虫植物らしい姿と機能を持った有名な食虫植物です。
「はさみワナ式」の捕食スタイルを採用しており、二枚貝のような葉で、挟んで捕虫する姿は、まるで大きな口でパクッと獲物を食べているように見えます。
葉の内側にはそれぞれ3本の感覚毛と呼ばれるセンサーがあり、蜜で誘い込まれた虫がこれに2回触れると、約0.5秒の速さで葉が閉じ、挟み込んでしまうのです。
約1週間かけて獲物の養分を吸い終えると、再度開いて新しい獲物を誘い始めます。
このセンサーは虫以外のものが触れても閉じてしまうのですが、消化液はタンパク質にのみ反応して分泌し、タンパク質以外のものを挟んだ場合は、葉を開いて排出する、優れたメカニズムも持っています。
ちなみに、スーパーマリオに出てくるパックンフラワーのモデルは、このハエトリソウだと言われています。
ダイナミックな動きは感動的で、捕虫能力も高いのですが、葉一対に対して虫一匹という制約があるため、捕虫量がそれほど多くないのは残念なところです。
ハエトトリソウ、育ててみると意外とかわいいかも!?
最強食虫植物ランキング 番外編
ここでベスト3を前に、番外編として、可憐で美しい食虫植物を2種類ご紹介しておきたいと思います。
最強食虫植物ランキング 番外編① ウサギゴケ
ウサギゴケは、コケと名が付いていますが、、10位でご紹介した、ミミカキグサと同じタヌキモ科の食虫植物です。
ウサギの顔のような、1cmにも満たない小さな白い花が連なる姿は、とても可愛らしく可憐です。
花の部分で虫を捕まえるわけではなく、ミミカキグサ同様、地下茎の捕虫嚢で捕食します。
とても食虫植物には見えないこの可愛らしい花は、園芸店などでも人気となっています。
最強食虫植物ランキング 番外編② プリムリフロラ・ローズ
プリムリフロラ・ローズは、愛知県の食虫植物栽培家が発見した日本発の園芸品種です。
第6位でご紹介したムシトリスミレの仲間で、一段と華やかで美しい花を咲かせます。
花びらが幾重にも重なって咲く、八重咲き種で、ローズという品種名も伊達ではありません。
葉の表面の腺毛から粘液を出して虫を捕まえることが出来ますが、知らない人はとても食虫植物だとは信じられないことでしょう。
最強食虫植物ランキング 3位 サラセニア
サラセニアは、カナダ南東部から北アメリカ東部、南部に分布する食虫植物です。
ラッパのような筒状の捕虫葉に、獲物を落とし消化する「落とし穴式」の捕食スタイルを採用しています。
第7位でご紹介したヘリアンフォラ同様、甘い蜜で捕虫葉へ誘い込むのですが、サラセニアの分泌する蜜には、微量の毒を含んでいるため、虫たちは身体がマヒし、次々と消化液のプールへと落ちていってしまうのです。
捕虫能力の高さから、当然捕虫量も多く、食虫植物界随一の大食漢と言われることもあります。
消化液の中に含まれる酵素は微量ですが、虫を多量に捕食し、敢えて消化不良を起こし、バクテリアを多量に繁殖させるという力技を用いて、消化分解を促します。
捕虫葉の大きさや形、カラーバリエーションも様々で、小さなものでは10cm、大きなものは1メートルを超すものもあり、鑑賞用としても人気の高い種となっています。
最強食虫植物ランキング 2位 ドロソフィルム
ドロソフィルムは、スペインやポルトガル、北アフリカのモロッコに分布する食虫植物です。
「粘着式」の捕食スタイルを採用する食虫植物では、最強と言って良いでしょう。
ドロソフィルムの最大の特徴は、強力な粘着力と独特の甘酸っぱい匂いを発する消化液にあります。
これによりハエを始めとする、臭い匂いを好む虫を大量におびき寄せることが可能で、コガネムシやコクワガタなどの、甲虫類を餌食にすることもあります。
粘着力も最強で、大小様々な虫を、ガンガンに絡めとり、逃がすことはありません。
猫もこの匂いが好きで引き寄せられるそうですが、さすがに猫を消化吸収したという事例はないようです。
最強食虫植物ランキング 1位 ウツボカズラ
ウツボカズラは、第4位でご紹介したハエトリソウと並び、食虫植物の代表として昔から有名な種類です。
マレーシアやインドネシアなど熱帯アジアに幅広く分布しており、これまでに100種以上が確認されています。
蓋の内側にある蜜腺から甘い蜜を分泌し、筒状になった捕虫葉に落としこみ、底に溜まった消化液で、捕らえた虫を分解し養分を吸収する「落とし穴式」の捕食スタイルを採用しています。
このランキングの3位でご紹介した、サラセニアも同じ「落とし穴式」を採用しており、大差が無いように見えます。
しかし、2009年と比較的最近にフィリピンで発見された新種のウツボカズラは、直径30cmもの大きな捕虫葉を持っており、ネズミなどの小動物がすっぽりと収まるサイズを持っています。
実際に、鮮やかな捕虫葉と魅惑的な蜜により、小動物をも誘いこみ、消化液で溺れさせ、溶かしてしまい、骨しか残らないほどの消化力を発揮するのです。
現在のところ、このウツボカズラが最強の食虫植物と言ってよいのではないでしょうか。
最強食虫植物ランキング まとめ
世界最強#食虫植物ランキング、いかがだったでしょうか?
この記事を読んでいる内に、食虫植物が可愛く見えてきた、育ててみたいと思った方もいらっしゃることでしょう。
種類にもよりますが、比較的安価でにネット通販などでも簡単に購入することが可能なので、この機会に食虫植物と共に暮らしてみてはいかがでしょうか。
尚、今回のランキングは、あくまで私個人の独断と偏見をもとに、順位付けしたものに過ぎません。
エンターテイメント範疇として暖かい目で見て頂けましたら幸いです。
最強食虫植物ランキングを動画で視聴する
この掲載記事「最強食虫植物ランキング」の動画版を作成し、YouTubeへアップしました。
実際に動きのある捕虫シーンや多数のビジュアルなどを盛り込み、見ごたえのある内容になっています。